最近読んだ本

引越しやらなんやらで間が空いてしまった。。直近読んでた本の感想をば。


零度のエクリチュール

零度のエクリチュール

「零度のエクリチュール」と「記号学の原理」の2本立て。
零度のエクリチュールエクリチュール(文体)の歴史を顧みつつ執筆された時期に現われはじめているカミュ、クノーなどの作品に顕著な零度のエクリチュールに対する考察。零度のエクリチュールというのは同時代に現われたカミュサルトルなどの中世的な文体を差しているらしい。徹底的に作家の「私」が漂白されているような。進行中のカルチャーを語る生な瞬間がパッケージされた文章で興味深い。その後エクリチュールは徹底的にメタ化されてもはや死に体というような今に至るのだけど。
同収録の「記号学の原理」のほうに手間取ってしまった格好だけどこれは非常に刺激的に読めました。ミーハーなので哲学用語にフランス語読みが付いてるだけで興奮。言語学を下敷きにモードや交通標識などさまざまな企業に構造を見出そうとする講義は不勉強な私には超クール。知的好奇心がビンビン刺激されました。結びの一文「記号学の研究の目的は、観察対象の模像(シュミラクル)を作り上げるという構造主義的活動全体の企図そのものに従って、言語以外の記号作用体系の機能を再構成することである」と書き記してあるまさにその通り。バルトの文体はとても読みやすい。


著者はニーチェの専門家ではないということでニーチェ哲学のエッセンス解説と伝奇的表記が半々くらい。9・11に触発され自身に科した同時代的な批評を行なわないという禁を破った書ということなのだけど、その実は学者の自説を巡る知的遊戯〜拡張された後書きといった風情で大いに不満。執筆時になぜニーチェといった時代に接続する瞬間が全く無かったのは何故?退屈とは言わないまでも読書のモチベーションが下がる一冊でした。次は後書きに挙げられていたハイデガーニーチェ論を読んでみたいな。