人生ははかない

ウルグアイの作家フアン・カルロス・オネッティの『はかない人生』読了しました。

はかない人生 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

はかない人生 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

かなり時間がかかってしまった。。その理由は、やたらと哲学的風に難しくて思わせぶりな会話や描写に手こずったのと、年齢的にも家庭的・社会的にも崖っ淵いる主人公が現実を超越するため自ら書いた小説(元は映画のシナリオ)でアルターエゴ(もっと言うと、ドッペル)を創造(想像)し、やがてその物語と同化しメタ人生を生き(少なくても観念上は)別の人間に生まれ変わるっていう複雑な、というか実際読むと訳分からない、非常に陳腐な例えだけど言ってしまえば物語の「括弧」を開きまくりなゴダール的に感じられる構造(劇中劇の主人公が作者(実際の小説の主人公)の存在を意識する場面があるんだけど、さらにその実際の小説の主人公が作者である(もしくは当て擦るっていると思われる)「オネッティ」なる人物が登場するところなんか、まさに!だけども)に苦しめられたからです。。
正直娯楽としての小説として好きか?と聞かれたら苦手と答えてしまう部類に入るかもしれない。。が、しかし、このフォークナーで言うところの「ヨクナパトーファ」な(架空な)川沿いの町「サンタ・マリア」を中心に起こるコミュニケーションの喪失と回復?を描いた小説は非常にヨーロッパ的な印象を与えて、いい意味で僕のラテンアメリカ小説感を裏切るものでした。あんまり土と血と結びついた宗教の匂いが濃くなかった。これも「ラテンアメリカのスイス」(あとがきより引用)と言われるお国柄なのか。



そんで今日帰りに渋谷タワレコ行って気になってたCDを長時間試聴してきました。気になってた東京ザヴィヌルバッハの新譜でも、ライセンス契約してから憤りを感じる値付けになってておかしいコモンズ経由じゃなくてよかったー、なアレフワン(アルヴァ・ノト)の1stでもなく、エレクトリイックマイルスというよりマハヴィシュヌ・オーケストラに接近してる気がする(ジャケのフォントもどことなく・・)オマー・ロドリゲス・ロペス・クインテットでもなく、モンドなジャケットにずっこける超ハイパーで濃密な今堀恒雄吉田達也のデュオ2ndでもなく、悩んだ挙句灰野敬二吉田達也の『ハウエンフィミウメ』を購入。(Amazonでの扱いは無いのか?)

2人が一緒にやったスタジオセッションのリエディット(!)。灰野さんの演奏を編集するという荒技使いの結果不思議なポップさと過激さが入り混じった音楽になってる!そんでもって、(勿論吉田さんもだけど)あんまり言われてないけど実は凄い灰野さんのギターテクニックを堪能できるのも素晴らしい。ジャンルも(まあこんな指摘あんま意味無いけど)トラッド〜フォークぽい小曲からハードコア、ジャズ色の強いものまで多彩で満足する内容です。


上以外で一番気になったのがBAKUの新作。

DHARMA DANCE

DHARMA DANCE

凄くかっこいい。2曲目のドラムンは血管ぶち切れるくらいのテンションだし、3曲目のドーズワンとの共作はアメリカのアングラでイケてるヒップホップと地続きな空気感みたいなものを感じる(って俺は実際行って聴いてるわけじゃないけど)。いとうせいこう参加曲もメッセージに共感するかは別として、ちょっと前の「日本の歴史オモロラップ」とは比べものにならない説得力を感じるし(ただ、その中で言及されてる「悪」の正体がチラッと聴いた限りだと具体的に示されてなくて、ちょっと危うい気がするけども・・・)。素晴らしいアルバムだと思います。欲しい。