神聖喜劇第2巻
大西巨人『神聖喜劇』第2巻読了。1巻からほぼ1ヶ月ほどかかってしまった。
- 作者: 大西巨人
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2002/08/01
- メディア: 文庫
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2巻はますます全体小説も全体小説の体を無し、主人公の奔放な想像力そのままに引用(を喚起する思考)はますます自由に伸びて行き、僕のキャパシティでは通読は無理か思うことも度々。特に漢文古文の引用が辛い。
しかし「安芸の彼女」との会話からこの小説の骨子(阿部和重が後書きで書いているように「最大の課題=生きるべきか死ぬべきか(戦場にいかに臨むか)の答えを出すこと」)が 、ひいてはそこかしこから僕が大西巨人作品の主題の1つだと思っている「現天皇制への不信感」(もっと言うと反対の立場)が立ち現れてきて文字通り目が離せなくなってしまったのであります。とても1つ作品とは思えない重厚感・情報量。この1冊だけで一般的な小説の5・6倍の濃度はあるでしょう。そして3巻へ不穏な影を落としたまま続く・・
「生きるべきか死ぬべきか(戦場にいかに臨むか)の答えを出すこと」っていうのは処女作『精神の氷点』でも試みられたことだ。そういえば『精神の氷点』でも見られたエピソードが散見されるし。答えを出すこと、≒思索することそれ自体、がこの小説のテーマとも言えるでしょう。思考を(引用その他を用いて)徹底的に顕在化させてゆくこと。
上にも書いたけど後書きで阿部和重が絶賛してます。
読者に向かって一つだけ言えることがあるとすれば、それはあなたの選択は決定的に正しいと言う一言に尽きている。そんな惹句は聞き飽きたと突っ撥ねたい気持ちも判らぬでもないが、今回ばかりは少しの誇張も無い真実が告げられているのでどうか素直に受け取って欲しい。(中略)日本文学史上の最高傑作の一つに今、あなたは遭遇してしまったのだから、ためらうべき理由などあるはずもないのだ。いや、日本文学史上の、などとケチなことは言わない。何なら世界文学的にも最高水準に値する一遍と断言したっていい。
うーん、激賞、ですね。
「日本文学史上の最高傑作の一つ」「世界文学的にも最高水準」・・。断言されてしまった。僕も選択は間違っていないと思ってます。(というよりもそれは分かっていたので読み出すまでに時間がかかってしまったのですが。。)しかし、これはもう何としても全巻を読んでしまうしかありません。