最近読んだ3冊

「犬神博士」「爆弾太平記」「冗談に殺す」の3編を収録。
唯一の長編「犬神博士」は乞食の神童が行く先々で世直し?を行なうお話。夢野にしてはストーリーに奇を衒ったところが無く(そうでもないかな・・)、プロットの力でグイグイ引っぱって行きます。が、史実と辻褄を合わせなくてはいけないせいか(福岡で実際あった炭鉱抗争を下敷きにしているらしい)、途中まで膨らむに膨らんだ話の勢いが見事に途中萎んでしまって、こりゃどちらかというと壮大な失敗作ですな。
「爆弾太平記」は収録されてる中で一番らしい作品。左遷されられた役人と仲間の親子の復讐劇で、昭和の地方の暗部、というかドロッとしたものが滲み出てます。言わば手塚治虫でいう『奇子』的な。けどちょっとあっさりしすぎてる。
「冗談に殺す」はどちらかというと安部公房ぽい、以上殺人犯の心理を描いた短編です。
この本を読むと、『ドグラ・マグラ』がいかに傑作だったかってのが良く分かります。


もの食う人びと (角川文庫)

もの食う人びと (角川文庫)

どこかで100円で買ってそのまま置いてました。しかし、大変面白かった。書いてある時代と今とでは状況が全く異なっているのだけど、世界はさらに悪い方向へ向かっているので、ここに書かれている悲惨な食の状況は今どうなってるんだと考えると非常に暗澹たる気持ちになります。


ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

別段ビーチボーイズのファンでもないし作品を聴きこんでいる訳でもない僕がこの本を読んだのは、人から貰ったから。。大業且つ古臭い音楽の表現の仕方はちょっと・・だけども、もう一度ちゃんと『Pet Sounds』聴いてみたくなりました。と、そう思えただけで訳者村上春樹が書いてるように読んだ意味があったってことなのでしょうか。